資料4: 朝日新聞の記事2「看護師の内診の禁止を明確化 厚労省が医療機関に通知」

http://www.asahi.com/life/update/0402/TKY200704020185.html
2007年04月02日15時41分

  横浜市の堀病院で助産師資格のない看護師に「内診」をさせていた事件などを受け、厚生労働省は2日、看護師は内診を含む分娩(ぶんべん)の進行管理をできないとする通知を都道府県を通じて全国の医療機関などに出した。堀病院の事件などで産科医や助産師などの間で解釈が分かれ、現場で混乱が深まっているため、厚労省としての姿勢を示す狙い。厚労省は過去にも看護師の内診を禁じる通知を出しており、「これまでの方針に変わりはなく、看護師による内診は認められない」としている。
 この問題をめぐっては、厚労省は02年と04年、内診について「医師や助産師しかできない助産行為に当たる」「医師の指示があっても看護師はしてはならない」とする見解を都道府県への通知の中で示した。しかし、いずれも自治体の質問に答える形だった。
 今回の通知では、「医師、助産師、看護師の適切な役割分担と連携が安全なお産には重要だ」と指摘。内診を含む出産の進行管理は看護師が行えないとの見解を明確化した上で、看護師は医師や助産師の指示・監督のもとで、妊婦の様子を見るなどの「診療または助産の補助、産婦の看護」を担うとした。

資料3: 朝日新聞の記事1「 看護師「内診」のガイドライン削除 産婦人科医会HP」 (asahi.comより)

http://www.asahi.com/life/update/0403/TKY200704030317.html
2007年04月03日20時48分
 


厚生労働省は3日、日本産婦人科医会(寺尾俊彦会長)に対し、ホームページ(HP)で、看護師の内診が認められたと、誤った解釈もできるガイドラインを掲載しているとして抗議した。医会は「会員の疑問に答えるため掲載したが、厚労省との相談が不十分だった」として、ページを削除した。
 厚労省は2日、看護師の「内診」を禁じる通知を都道府県に出している。しかし、産婦人科医会は同日付で「産婦に対する看護師等の役割に関するガイドライン」をHPに掲載。医師の指示監督の下ならば分娩(ぶんべん)経過中の観察はできるとして、注意点を列挙していたほか、同省の了解のもとで作成したとしていた。
 この内容に、厚労省は「内容に関する相談を一切受けていない」としたうえで、「通知で禁止した看護師の『内診』に該当する可能性があり、現場を混乱させる」と、医会に削除を要請した。
 医会の木下勝之副会長は「掲載は取りやめたが、助産師不足は深刻化しており、お産が立ちゆかない現状に変わりはない。ガイドラインについては今後、慎重に協議していきたい」と話した。

資料2: 厚生労働省通達「分娩における医師、助産師、看護師等の役割分担と連携等について」

http://www.honey.ne.jp/~yosyan/image/MSWL_hojokan.pdf

特に重要な部分を引用:


・・・とりわけ分娩においては、医師、助産師、看護師等が、母子の安全・安心・快適を第一義に、お互いの業を尊重した上で、適切な役割分担と連携の下で出産の支援にあたることが何より重要である。

・・・看護師等は療養上の世話及び診療上の補助を業務とするものであり、(保健師助産師看護師法第5条および第6条)、分娩時においては自らの判断で分娩の進行管理を行うことはできず、医師又は助産師の指示監督の下診療又は助産の補助を担い、産婦の看護を行う

内診問題で揺れる厚生労働省。裏で蠢く看護協会

★このエントリは4月3日に別のところに書いたログの再掲です。

看護婦の内診問題で、厚生労働省と日本産婦人科医会がもめている

新聞報道によると、厚生労働省は、4月2日に「内診を含む看護婦による分娩(ぶんべん)の進行管理」を禁ずる通達を発した。

一方、日本産婦人科医会は同じ日に、同会のサイトで、医師の指示・監督下であれば看護婦が分娩の経過観察ができるという見解を発表した。ところが、これが厚生労働省見解と異なっていたということで削除された。(4月3日朝は、日本産婦人科医会ホームページの“医会からお知らせ”に「産婦に対する看護師等の役割に関するガイドライン」が掲載されていたが、午後3時頃にはすでに削除されたらしい。)

一見、厚生労働省産婦人科医会の見解が正面からぶつかった格好だ。しかし厚労相通達は、厄人言葉で抽象的なことが書いてあるだけで、普通なら「対立」したくても「対立」できないような代物だ。この文章をどう読んでもそれが「内診禁止の通達」であるとは読み取れない。
興味深いことに、産婦人科医会は「厚生労働省の了解の下に見解を発表した」と主張している。つまり、当初は厚労省産婦人科医会の間に対立はなかったとみるべきなのだ。

厚労相の裏には、極悪利権団体=久常看護協会がいる

ところが、3月30日に看護協会が厚労省にねじ込んでおり、その後に厚労相が「看護婦の内診禁止」を強く前面に押し出したということのようだ。その内容は看護協会のリリースに述べられている。

つまり、看護協会の圧力で厚労省の態度が変わり、玉虫色の通達が「内診禁止の確認」の通達になったというわけだ。「看護協会の大勝利」と言われる所以だ。
そもそも、看護婦の内診については賛否両論あり、この問題は以前から厚生労働省内部でも議論が積み重ねられてきた。ところが、堀病院の事件が勃発したとたん、厚生労働省の一部役人が、そそくさと看護婦の内診禁止の通達を発してしまった。つまり一部役人の跳ね上がり行為だ。明らかに、この裏には、厚生労働省の役人崩れの久常節子が会長を務める看護協会の強い影響力がある。

かくして日本の医療は崩壊へ向けて着実に歩を進める

看護婦に内診をさせることができなければ、産婦人科医療は立ちゆかなくなる。ただでさえ、医師不足助産婦不足が深刻になっている中、看護婦が看護助手同然の存在になってしまうのだ。これで、どうやって周産期医療をやれというのだ。

このツケはすべて患者に回される。

この状況を作り出したのは、久常の看護協会と、その政治力に屈服した厚労省の厄人以外の何者でもない。いったいこの有様のどこが「医師、助産師、看護師等が、母子の安全・安心・快適を第一義に」しているのか、久常さんに是非説明してもらいたいものだ。

看護婦の給与を調べてみた

★ このエントリは2007年3月に別のところに書いたログの再掲です。

「質が下がっている」と言われる看護婦だが、給与はどうなっているだろう。

下は看護協会の資料だ。
http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/housyu/pdf/h17kaisetu.pdf

この資料で、看護職員(保健婦助産婦、看護婦、准看護婦)の給与について知ることができる。

この資料の中から、平成7年からの看護職員の給与推移を、コピーして、このエントリに添付した(右の図)。

ただし、このデータは月毎に支給される給与の推移だけしか表していない。賞与が入っていないから、年収がどう推移してきたかはイマイチわからない。(看護婦の年収については、下の囲みの中のデータが参考になる)。

公的病院では、平成13年頃から看護職員給与は横ばいだ。しかし、民間病院(個人経営を除く)では年々上昇している。平成7年の平均月額給与が262,470円で、平成17年には314,333円になっている。約20%増だ。この期間、日本経済は深刻なデフレだった。その中で、20%の給与増というのは実質賃金を考えると大幅な賃上げだ。

このこと一つ見ても、いかに民間病院の経営が看護婦給与に圧迫されているかわかる。一方、公的病院の給与は平成13年をピークにほぼ横ばい(若干の減少)になっている。この原因について、看護協会は、「公的病院における給与抑制策のせい」と主張している。しかし、もともと赤字垂れ流しでも平気な公的病院だから、おのずと給与水準が高かったのだろうし、国公立では、平成13年以降、一時的に、看護婦不足が解消したという見方もできるだろう。

平成18年の統計はまだわからないが、非常に興味がある。おそらく、新看護基準による人為的看護婦不足のせいで、大幅に跳ね上がっていると思う。

看護婦を確保しなければ診療報酬がもらえず、看護婦を確保すれば、求人費と人件費のせいで、ほとんど経営が破壊寸前になっている民間病院も多いと聞く。「死ぬも地獄、生きるも地獄」の状況だろう。

下の囲みの中に、国勢調査と賃金センサスのデータを併せて作った看護婦の労働条件についての統計を引用した。

平均年齢35歳で、年収462万円。労働時間が月に160時間。時間外労働が9時間。この労働条件を民間の一般企業と比較してどう見るか。ただし、この統計では、様々な就業形態を一緒くたにしている。病棟でレギュラーで夜勤をして働く看護婦だけ抽出して調べてみれば、これよりはるかに高給だろう。(実際、700万、800万を超える人もかなりいるようだ)。
念のために言っておきたいが、看護婦の労働は、必ずしも巷間言われているような過酷なものではない。明らかに誇張されている。「ナースのお仕事=3Kで過酷」という神話が世間に定着した背景には、労働組合と看護協会のたゆまぬ努力と尽力があるように思う。

看護婦の労働条件

・ 就業者数(計)=976214人
・ 労働時間(平均)=169時間/月
・ 所定内実労働時間(平均)=160時間/月
・ 超過労働時間(平均)=9時間/月
・ 賃金(平均)=462.66万円/年
・ 所定内給与額(平均)=27.92万円/月
・ 超過労働支給額(平均)=3.6万円/月
・ 年間賞与その他特別給与額(平均)=84.42万円/年
・ 年齢(平均)=35.3歳
http://cmx.vrsys.net/I/CCS_i_02_body.php?occcode=08106&;;;

知人の病院経営関係者が嘆いていた。

           
「新看護基準導入後、看護婦不足のせいか、看護婦の態度が極めて悪くなった。ちょっと叱るとすぐに退職をちらつかせて脅す。これでは、教育も何もできない。勤務評定をしようと思っても、低い評価をして辞められたら思うと、キチンとした評価ができない。社会常識に欠けているし、向上心もない人が多い」

人為的な雇用保護をすれば人材の質は下がる。経済学部の一年生の教科書に出てきそうな話だ。

患者の生命と安全を脅かす看護協会

★ このエントリは2007年1月に別のところに書いたログの再掲です。

助産婦の引き抜きに100万円?

看護婦・助産婦(「看護師」「助産師」とも呼ばれているらしい)の不足が深刻化している(下に掲載したasahi.comの記事参照)。

助産婦を引き抜くために、100万円を用意する産科医院があると聞いた。100万円という金額が、支度金なのか月給なのかは知らないが、いずれにしろ大したものだ。

テレビドラマでは「時給3,000円のスーパー派遣」とやらが鼻をふくらませて威張っているが、その程度の時給なら、その辺をウロウロしている看護婦でも楽に稼いでいる。

日本中の病院が、看護婦確保のために必死になっている。新卒看護婦のために各病院が開催する職場説明会では、豪華なおみやげが出るという。いくつかの病院説明会をハシゴすれば、持ちきれないほどのおみやげをもらえるという。

看護婦の引き抜き合戦は激化する一方だ。いったい、看護婦一人に、いくらの支度金が支払われているのだろう。興味のあるところだ。

大都市の大病院に集中する看護婦

看護婦不足は、地方でとりわけ深刻だ。地方の病院が看護婦確保のためにいくら頑張っても、それをあざ笑うかのように看護婦は大都市の大病院に流れていく。昔なら鼻も引っかけてくれなかったような大都市のブランド病院が、良い条件で雇ってくれるからだ。

昨年改定された看護基準により、病院は、それまでよりはるかに多くの看護婦を雇わなければならなくなった。そうしないと、診療報酬を減額され経営が立ちゆかなくなるからだ。そのため、大都市の大病院は看護婦の大量採用を始めた。結果、地方の病院では急激に看護婦不足が生じた。このままいけば、地方の病院は経営危機に陥り、倒産が続出するだろう。その結果、地方に住む人びとから医療が奪われる。

これが「格差」でなくてなんなのだろう。この格差を作りだした張本人こそ、久常節子率いる白衣の利権屋=日本看護協会と、厚生労働省の厄人達なのだ。
楽しく看護するにわか役人奮闘記―久常節子の看護課長体験



看護協会は長年「看護婦不足」を切望し、厚生労働省は「病院つぶし」を戦略的目標としてきた。両者は共謀することにより夢をかなえた。まさに、厚労省の“厄人”あがりの久恒ならではの“快挙”だ。

だが、有頂天になった久常節子の皺だらけの唇から発せられる「看護の質向上」の美辞麗句の影で、人為的看護婦不足のため医療の危機は深まっている。脅かされているのは患者の生命と安全だ!

久常の看護協会は、「看護婦の数と患者の死亡率との負の相関」という学説を唱えている。ならば、自ら戦略的に看護婦不足を引き起こしている看護協会は、確信的に患者の命を脅かしていることになる。これでは「患者殺しの久常節子」と呼ばれても文句は言えまい。

久常から 「助産師会」へのお裾分け=「内診問題」

利権でお腹一杯になった看護協会は、それまで微妙な関係にあった助産師会にも利権のお裾分けをした。それがいわゆる内診問題だ。

妊婦の内診は、看護婦に許されている静脈注射よりはるかに簡単な医療行為だ。ところが、看護協会は、それを助産婦の独占業務に仕立て上げてしまった。

久常は、堀病院の事件が起きるやいち早く「内診は助産婦の業務」との看護協会見解を発表した。

2006年09月11日

 横浜市の堀病院が准看護師らに無資格の助産行為をさせていたとされる事件をめぐり、日本看護協会は11日、妊婦の子宮口の大きさなどを確認する内診などの助産行為について「必ず助産師が実施するよう周知徹底する」とした声明を出した。

 同協会は「安全なお産のため、現場の看護師らに改めて呼びかけることにした」としている。

そして、彼女の息のかかった(と噂される)厚生労働省の木っ端役人は、そそくさと「内診は医師と助産婦以外はしてはならない」というバカげた通達を出してしまった。明らかなスタンドプレーだ。内診問題は、厚生労働省内部では、議論が始まったばかりの「検討中」の項目であったからだ。
http://diarynote.jp/d/75837/20061016.html

内診問題に対する看護協会の対応は、一見、不思議な行動に思える。普通であれば、専門職にとっては、独占業務の範囲を拡大することは、当該専門職の立場を強化するはずだ。従来、産婦人科領域で、看護婦は助産婦の下働きのような存在だったから、内診を看護婦の独占業務とすることは、産婦人科領域での彼女らの地位の向上を意味するはずだ。バカの一つ覚えのように「看護婦の地位向上」と叫び続けてきた看護協会にとっては、「内診問題」は看護婦の地位向上のための千載一遇のチャンスであったはずだ。ところが、久常は、それを気前よく助産師会にプレゼントしてしまった。

明らかに利権のお裾分けだ。

これで、助産婦不足に猛然と拍車がかかった。只でさえ、医師不足で危機にある日本の産婦人科医療は、久常の暴挙で壊滅的打撃を被ってしまったのだ。

百害あって一利なしの看護協会は解散しろ!それが患者のためだ

おそらく、今年の春の改定で、看護基準は緩和されるだろう。日本医療はこれ以上、看護協会に利権を与え続ける余裕はない。すでに、テレビ局を始めとしてマスコミがこの問題に目を付けている。医師会や病院会を始めとして各種業界団体も制度見直しの要求を始めている。下の記事にあるとおり、中医協でも見直しの方向で議論が進められている。

しかし、単に看護基準を緩和しても、根本的な解決には至らないだろう。自民党内部に食い込み肥大化を続ける看護協会を解体しない限り、慢性的な危機にある日本の医療は救えない。

そのためには、まずは、殺人的看護婦不足を創りだした下手人=久常節子を退陣させることだ。

■ 看護師不足、より深刻に 来年需要、7万人増 日医試算
2007年01月17日付asahi.comより
 
 全国の病院間で看護師の獲得競争が激化している問題で、日本医師会は16日、全国の病院へのアンケート結果をもとに、08年4月に必要になる看護師の数は06年10月よりも約7万人多い88万1000人になるとの試算結果をまとめた。現状通り年3万人ペースで看護師が増えても、深刻な看護師不足に陥る可能性があるとしている。看護師は待遇がいい都市部の大病院に集中する傾向があるため、日医は、このままでは地域の中小病院との看護師配置の格差が深刻化しかねないと指摘している。

 17日の中央社会保険医療協議会中医協)で報告する。看護師を手厚く配置した病院に診療報酬を上乗せする昨年4月の診療報酬改定が影響し、需要が膨らんだとみられ、中医協でも改定の再見直しを求める声が高まりそうだ。

 調査は3185病院を対象に実施し、全国の病院の約4分の1に当たる2091病院が回答。各病院の現在の看護師の配置と将来の増員予定を尋ね、それを元に将来必要な看護師数を試算した。

 それによると、診療報酬が最も手厚くなる「入院患者7人に対して看護師1人」の基準を満たすのは、06年度は300床以上の病院の16.3%だったが、07年度には38.8%に増え、08年度は54.6%に達する。

 この結果、病院で必要な看護師数は06年10月末の81万2000人から08年4月には6万9000人増の88万1000人に達する。看護師数は99〜04年は、年平均約3万人の増だが、病院勤務の看護師に限れば年間約1万人しか増えていない。この傾向をあてはめると、08年4月には現在よりも2万〜5万人程度、看護師の需給関係が悪化する計算だ。

 日医は准看護師の養成増などを提案しているが、中医協内では「看護の必要度の低い病院まで看護師を集めていることが問題」として、診療報酬の上乗せは急性期医療を中心とする病院に限るべきだ、との声も強い。

後記:堀病院の事件は不起訴となった。それならば、早く内診を助産婦の独占業務から外し、看護婦の業務としろ。そうでなければ、産婦人科医療は立ちゆかなくなる。もはや厚労相と看護協会のやっていることは犯罪行為だ。

年間約3000人が出産する堀病院(横浜市)の無資格助産事件で、横浜地検は31日までに、保健師助産師看護師法違反(助産行為の制限)の疑いで書類送検された堀健一院長(79)を不起訴処分(起訴猶予)とする方針を固めた模様だ。起訴して刑事責任を問えば、産科医や助産師の不足が深刻なお産の現場に与える影響が大きいことや、また堀院長が地検側に院長職を辞する考えを伝えたことなどを踏まえ、総合的に判断したとみられる。

「白衣の利権屋」=看護協会

原宿にピカピカのビルディング

表参道のヒルズのななめ向かい。ヴィトンのならび、バーバリーの隣に場違いな団体の建物がある。「白衣の利権屋」=看護協会だ。ここは、ちょっと前までは、白衣の幽霊がが出そうなオンボロな建物だったのだが、2004年にピカピカの建物に建て替えた。看護協会はお金持ちなのだ。

この団体の主な活動は、看護婦の利権確保だ。つまり、必要以上に多くの看護婦を、必要以上に高い給料で医療機関に雇わせること−−経済学の言葉では、レント・シーキング(rent-seeking、利権漁り)と呼ばれている。

自民党に深く食い込む「白衣の利権屋」=看護協会

「白衣の利権屋」はあなどれない。いつもまにか着々と力を付け、ついには大臣まで輩出した。
2005年の郵政国会で、しどろもどろの答弁を繰り返した南野智恵子法務大臣を覚えているだろうか。あの「お猿の電車顔」のオバサンだ。
ttp://www.kaokab.jp/ranking/kao%20news/nouno-chieko.html*1

この人、実はなかなかのキャリアを持つ助産婦で、看護界の重鎮なのだ。政治家としての最大の功績は、看護婦と助産婦を看護師と助産師と呼ばせるようにしたことと、殺伐とした国会に笑いをプレゼントしたことだ。

南野智恵子が法務大臣になったことを見ても、いかに看護協会や看護連盟という看護関係の圧力団体が力をつけてきたかが解る。看護協会幹部達の看護婦の地位向上と利権確保に対する執念たるや・・もう看護協会というより看護狂会と呼んだ方がいいかもしれない。その勢いは止まらず、いまや医師会以上に自民党に食い込んでいる観がある
そんな「看護狂会」が全勢力を傾けて政府に圧力をかけて作らせたのが、2006年の春の診療報酬改定で定められた新看護配置基準なのだ。これは病院の看護婦の配置についての規則だ。しかし、その内容を精査すれば、実はすさまじい診療報酬の引き締めであることがわかる。実際、この規則のために多くの病院が倒産の危機にあるとさえいわれているのだ。
(新看護基準については前のエントリ『医療崩壊を加速させる人為的看護婦不足』を参照http://d.hatena.ne.jp/eggplanty/20070423#1177511072)

病院関係者も役人も頭をかかえる複雑怪奇な看護基準

改定直後、最初に頭をかかえたのが、監督官庁である社会保険庁の役人だった。なにしろ煩雑なのだ。あまりに煩雑で、病院の総婦長や事務長が対応できなく右往左往した。しかし混乱したのは病院関係者だけではなく、社会保険庁の役人も大混乱だった。役人によって解釈が違ったり、言うことが違ったりしたという。

そういう状況なので、病院関係者は何を信じていいのかわからなくなり疑心暗鬼になったという。煩雑な規則を繰り返し読んで、ない頭をひねって勤務表を作り、「これで良いだろう」と申請しても、後から監査でNGにされ、何千万円もの診療報酬を「返せ」と言われかねないのだ。さぞや胃の痛い思いをしたことだろう。

しかし、中には開き直っている院長がいて、「あんな規則なんてデタラメなんだから、こちらも二重書類作って、最高額を請求しておけばかまわない」と豪語していた。おそらく、そういう病院が結構あるのではないだろうか。

「看護協会の幹部は現場をまるで知らない!」病院関係者は口をそろえて言う。

「久恒(看護協会会長)はバカだ。まるで現実が見えていない。全然、話が通じない」とは、ある日本病院会幹部の言だ。
そもそも、看護協会の上層部は、南野に言及するまでもなく、あまり頭の出来が良いとは言い難いようだ。扁桃体だけ異常発達していて、前頭前野の半分はガーゼでできているのかと思うほどだ。そんな頭の中に「看護理論」なるものを詰め込んで、それでもまだ空いている部分は女性特有の激しい思いこみでシッカリ固める。結果、ひどく現実離れしている上に、宗教がかった「看護教」の狂信者ができあがる。そういう人たちが厚労相の官僚達と手に手をとって踊りながら、ブゥードーの呪いをとなえる。そんな儀式の煙の中から出来上がったのが、新看護配置基準だ。

そして、病院つぶしを目論む厚生労働省と看護婦不足を創り出したい看護協会が野合した

それにしても、何故このような破壊力のある看護基準がいとも簡単に導入されたのだろうか。看護協会が力をつけたからか?准看問題での医師会との対立が緩和したからか?自民党となんらかの取引が出来たからか?小泉政権への貢献のご褒美か?

もちろん、それらもあると思うが、やはり一番大きな要因は、看護協会と厚生労働省が野合していることだ。

  • 看護協会の目論見は人為的な看護婦不足を作り出して、看護婦の雇用と労働条件の大幅アップを実現し、それによって看護婦の支持を得て協会を強化しようというものだ。

実際、これまで看護婦の供給はだぶついていた。バブル崩壊以降の長期の不況で看護婦になる者が増えた。(平成16年の「看護師」数は760,221人で、平成14年の441,309人に対して、56,308人、8.0%増加している。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/04/kekka1.html

また、通信教育で、大量の准看護婦が即席に「正」看護婦になる。このままでは、看護婦不足どころか看護婦過剰になってしまう。そうなると病院の看護婦に対する買い手独占的競争力がますます大きくなる。病院が市場支配力をもってしまえば看護婦の選別が進んでしまう。圧力団体にとってメンバー同士の競争をかき立てられることは死を意味する。だから、これに対抗しなければならない。そこで、看護協会は、人為的看護婦不足戦略を強化を図り、役人と一緒になって狂気じみた看護基準の導入に狂奔したというわけだ。

  • 一方、厚生労働省の目論見は、厳しい看護基準を導入し、入院治療に係る診療報酬を削減し、医療費を削減しようというものだ。それに加え、看護婦の雇用コストを引き上げることで、病床数を削減できたらいいと考えている。さらには、結構な数の病院につぶれてもらって病院数を減らすことが出来たら儲けものと思っている。

極めてシンプル。

かくして、役人=「厄人」と看護協会=「看護狂会」という、まったく違う動機の両者が、「厳しい看護基準の導入」という一点で一致した。

厚生労働省の目論見は、多分、成功すると思う。どこの病院も大幅な減収で、病床削減はもとより、病院倒産による病院数減少は必至だ。これで医療費は削減できる。患者のことなど知ったことではない。

しかし、看護協会の目論見がどうなるかは解らない。新看護配置基準は、単に看護婦の雇用条件を改善することに失敗するだけでなく、看護の質の低下も招くだろう。そして、しばらくすれば、現場の看護婦から反対の声があがるはずだ。そのときに、久恒をはじめとした看護協会の「現場を知らない」幹部達がどんな顔をするか・・・ to be continued

*1:最初にhをつけて、%を半角にしてアドレス欄に入力して