看護婦の給与を調べてみた

★ このエントリは2007年3月に別のところに書いたログの再掲です。

「質が下がっている」と言われる看護婦だが、給与はどうなっているだろう。

下は看護協会の資料だ。
http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/housyu/pdf/h17kaisetu.pdf

この資料で、看護職員(保健婦助産婦、看護婦、准看護婦)の給与について知ることができる。

この資料の中から、平成7年からの看護職員の給与推移を、コピーして、このエントリに添付した(右の図)。

ただし、このデータは月毎に支給される給与の推移だけしか表していない。賞与が入っていないから、年収がどう推移してきたかはイマイチわからない。(看護婦の年収については、下の囲みの中のデータが参考になる)。

公的病院では、平成13年頃から看護職員給与は横ばいだ。しかし、民間病院(個人経営を除く)では年々上昇している。平成7年の平均月額給与が262,470円で、平成17年には314,333円になっている。約20%増だ。この期間、日本経済は深刻なデフレだった。その中で、20%の給与増というのは実質賃金を考えると大幅な賃上げだ。

このこと一つ見ても、いかに民間病院の経営が看護婦給与に圧迫されているかわかる。一方、公的病院の給与は平成13年をピークにほぼ横ばい(若干の減少)になっている。この原因について、看護協会は、「公的病院における給与抑制策のせい」と主張している。しかし、もともと赤字垂れ流しでも平気な公的病院だから、おのずと給与水準が高かったのだろうし、国公立では、平成13年以降、一時的に、看護婦不足が解消したという見方もできるだろう。

平成18年の統計はまだわからないが、非常に興味がある。おそらく、新看護基準による人為的看護婦不足のせいで、大幅に跳ね上がっていると思う。

看護婦を確保しなければ診療報酬がもらえず、看護婦を確保すれば、求人費と人件費のせいで、ほとんど経営が破壊寸前になっている民間病院も多いと聞く。「死ぬも地獄、生きるも地獄」の状況だろう。

下の囲みの中に、国勢調査と賃金センサスのデータを併せて作った看護婦の労働条件についての統計を引用した。

平均年齢35歳で、年収462万円。労働時間が月に160時間。時間外労働が9時間。この労働条件を民間の一般企業と比較してどう見るか。ただし、この統計では、様々な就業形態を一緒くたにしている。病棟でレギュラーで夜勤をして働く看護婦だけ抽出して調べてみれば、これよりはるかに高給だろう。(実際、700万、800万を超える人もかなりいるようだ)。
念のために言っておきたいが、看護婦の労働は、必ずしも巷間言われているような過酷なものではない。明らかに誇張されている。「ナースのお仕事=3Kで過酷」という神話が世間に定着した背景には、労働組合と看護協会のたゆまぬ努力と尽力があるように思う。

看護婦の労働条件

・ 就業者数(計)=976214人
・ 労働時間(平均)=169時間/月
・ 所定内実労働時間(平均)=160時間/月
・ 超過労働時間(平均)=9時間/月
・ 賃金(平均)=462.66万円/年
・ 所定内給与額(平均)=27.92万円/月
・ 超過労働支給額(平均)=3.6万円/月
・ 年間賞与その他特別給与額(平均)=84.42万円/年
・ 年齢(平均)=35.3歳
http://cmx.vrsys.net/I/CCS_i_02_body.php?occcode=08106&;;;

知人の病院経営関係者が嘆いていた。

           
「新看護基準導入後、看護婦不足のせいか、看護婦の態度が極めて悪くなった。ちょっと叱るとすぐに退職をちらつかせて脅す。これでは、教育も何もできない。勤務評定をしようと思っても、低い評価をして辞められたら思うと、キチンとした評価ができない。社会常識に欠けているし、向上心もない人が多い」

人為的な雇用保護をすれば人材の質は下がる。経済学部の一年生の教科書に出てきそうな話だ。